スケルトンリフォームと建て替え、どっちがお得?工程や費用を比較検討
マイホームを建ててからしばらくすると、家族構成やライフスタイルにも変化が訪れます。古くなった設備に不具合が生じたり、間取りに使いにくさを感じるようになったりすることもあるでしょう。そういったとき、より「快適な暮らし」を実現するための手助けとなるのが、「スケルトンリフォーム」や「建て替え」といった選択肢です。
部分的なリフォームだと、思い切った間取りの変更や現在のライフスタイルに合わせた住まいづくりに対して限界があります。しかし、スケルトンリフォームや建て替えなら住まいの使い勝手や暮らしやすさを大きく変えることが可能です。この記事では、スケルトンリフォームでできることやできないこと、工事にかかる費用の目安、作業工程などをご紹介します。
目次
ここまでできる、スケルトンリフォームの自由度
「スケルトンリフォーム」は、現在の住宅の骨格部分のみを残して内装などを解体し、自由度の高いリフォームを実現する大規模リフォームのこと。スケルトン(skeleton)は「骨格」を意味する英単語で、柱・梁・床といった住まいの骨組みを指します。こうした骨組みを残して外壁や水回りの配管、間取り、設備をまるごと変更することで、新築することなく家族構成やライフスタイルに合わせた住まいの形を実現できるのが強みです。スケルトンリフォームは、「スケルトンリノベーション」や「フルリノベーション」などと呼ばれることもあります。
とはいえ、「スケルトンリフォームならなんでもできるのか」と言えばそうではありません。住まいの状態や条件などによって、「できること」も変わります。
スケルトンリフォーム、3つのタイプ
その1:内部のみのリフォーム
「親から相続した思い出深い建物なので、外観はそのまま残したい」といった場合、また「外壁はまだ傷みが少なくきれいなので、リフォームの必要はなさそう」といった場合は、「内部のみ」をスケルトンリフォームすることが可能です。
水回りの配置変更、間取りの変更、収納や階段の位置変更など、建物内部の仕様を大幅に変えることができます。築年数にもよりますが、「大規模な地震に備えて基礎部分の耐震を強化する」「より快適な生活を実現するためにすべての内壁に断熱材を入れる」といったことも。外壁に手をつけないので、費用も比較的安く抑えられるかもしれません。
なお、分譲マンションの場合は、所有者の判断で外観(外壁)や共有部分をリフォームすることができません。そのため、必然的に「スケルトンリフォーム=内部のみのリフォーム」となります。
その2:外部のみのリフォーム
内部のみのスケルトンリフォームとは逆で、内部には手をつけず外壁のみをリフォームするパターンです。外観のイメージを一新したい場合や、塗装では解決できないほど全体的に傷みがある外壁をきれいにしたい場合などに適しています。
ケースとしてはあまり多くないかもしれませんが、こういったリフォームもあるといった程度に覚えておきましょう。
その3:内部+外部のリフォーム
内部と外部の両方をリフォームする、スケルトンリフォームの中では一般的なタイプがこちらです。柱、梁、床のみを残して、住居の見た目や機能性を一新できます。再建築不可の物件でも、スケルトンリフォームなら問題なし。ただし、「ツーバイフォー(2×4)」や「プレハブ工法」で建築された物件は構造上、スケルトンリフォームが難しい場合もあります。
解体は手作業となり、廃材なども多く出るため費用は3つの中でもっとも高くなります。とはいえ、建て替えよりは安く、短期間で住居のイメージを激変させることが可能で、建て替えずに理想の間取りを実現できるのも魅力。自由な設計、バリアフリーな間取り、電気設備や配管の新設、最新設備の導入、断熱・遮音・環境へ配慮した建材の使用などができる点も、スケルトンリフォームの特長と言えるでしょう。
時と場合にもよりますが、スケルトンリフォームは工事が大規模になるため、「住みながら」の施工は難しいことが多いと言えます。スケルトンリフォームの工事期間を過ごすための仮の住まいも、場合によっては必要になるでしょう。工事期間が長くなることも予測されるため、近所への配慮も欠かせません。
スケルトンリフォームは通常のリフォーム・リノベーションとは何が違う?
これから施工業者と住まいの改修について話をする際は、どういった意味で以下の3つの言葉を使っているのかを覚えておくと、混乱することなくコミュニケーションできるでしょう。通常のリフォーム・リノベーションとスケルトンリフォームにどんな違いがあるのか、比較できるようにまとめました。
リフォーム
現在暮らしている住居を、新築のときと同程度の状態にする(原状回復する)ための工事をリフォームと呼ぶことが一般的です。
リノベーション
現在暮らしている住居の住みやすさや機能性を高めたり、より今の生活に合うように変更したりする大規模な改修工事を指すのが一般的です。既存の住まいに対して「それまでにはなかった新たな機能や価値を付加する工事」が、リノベーションと位置づけられます。
スケルトンリフォーム
柱、梁、床などの骨組みのみを残し、最大限の自由度を確保しながら行う大規模な改修工事を、スケルトンリフォームと呼ぶのが一般的です。「新たな機能や価値を付加する工事」という意味で、スケルトンリフォームはリノベーションの一種と言うことができるでしょう。
建て替えとは?
建て替えのメリットとデメリット
メリット
自由設計
建て替えは、土地の状況に応じて新しい設計を自由に行うことができます。これにより、最新の耐震基準や断熱基準に対応した家を作ることができます。
寿命の延長
完全に新しい家を建てることで、家全体の寿命を大幅に延ばすことができます。建て替えによって、現代の建築基準に基づく構造体を利用することで、長期にわたって安心して住むことができます。
デメリット
コストが高い
建て替えは、既存の建物を解体し、新たに基礎から作り直すため、リフォームに比べてコストが高くなります。特に、解体費や新築工事費、その他の関連費用(仮住まいの費用など)を考慮すると、総工費は大幅に増加します。
工期が長い
建て替えは工事期間が長く、場合によっては1年以上かかることもあります。これは、基礎工事から始めるため、全体の工期がリフォームに比べて長くなります。
建て替えの具体的な流れ
解体工事
まずは既存の建物を解体し、更地にする必要があります。解体工事には時間と費用がかかり、廃材の処理費用も発生します。
新しい基礎の設置
次に、新しい家のための基礎を作ります。地盤の調査と補強を行い、適切な基礎を設置することが重要です。
設計と建築
土地の条件や家族の要望を考慮して、自由に設計が可能です。耐震性や断熱性などの最新基準に基づいて建築されるため、快適で安全な住環境が実現します。
スケルトンリフォームと建て替え、どっちがお得?
大規模な改修工事を考えている場合、スケルトンリフォームは魅力的な選択肢となります。しかし、部分的なリフォームでは実現できない「間取りの変更」や「ライフスタイルに合わせた機能の付加」を実現するなら、「思い切って今の住まいを建て替えよう」という考え方もあるでしょう。
スケルトンリフォームと建て替えの比較表
スケルトンリフォームと建て替え、両方の選択肢が実現可能な場合は、「一体、どっちがお得なの?」と気になる方もいると思います。以下では、一般的なスケルトンリフォームと建て替えの費用感やメリット・デメリットをまとめました。
項目 | スケルトンリフォーム | 建て替え |
---|---|---|
工事費用の相場 | 300万円~2,500万円 ※工事箇所、面積などにより異なる | 1,500万円~4,000万円 ※面積や要望により異なる |
工事費用の坪単価 | 10万円/坪~(目安) | 30万円/坪~(目安) |
工事費以外の費用 | ・仮住まいの賃料 ・仮住まいへの引っ越し費用 ・床面積が変わる場合の登記申請費用 | ・仮住まいの賃料 ・仮住まいへの引っ越し費用 ・地鎮祭や上棟式などの費用 ・その他諸経費 |
工期 | 1~5ヶ月(場合による) | 3~8ヶ月(場合による) |
メリット | ・改修箇所を決められる(間取り、水回り、電気配線) ・予算の枠組みがしやすい ・耐震・断熱対策も可能 ・建て替えに比べて工期が短い ・再建築不可物件でも新築同様にできる ・場合によっては居住しながら工事も可能 | ・間取りは一から設計可能 ・リフォームに比べて多額のローンを組みやすい場合も ・完全に新築の住まいが手に入る |
デメリット | ・新築とまるっきり同じではない ・建て替えに比べて間取りに制約がある場合も ・リフォームできない建物もある ・大規模補修が必要な場合、予想以上に高額になる可能性も | ・スケルトンリフォームより工期が長くなるケースが多い ・場合によっては今より住居が小さくなることも ・取り壊した家の廃材処理に費用が多くかかる ・新築同様の手間がかかる |
スケルトンリフォームと建て替えには、それぞれメリットとデメリットがあります。現在の住居のタイプや状態、その他の条件によって、かかる費用やできること・できないことは変わってくるでしょう。重要なのは、どちらの場合も経験豊富なパートナーに依頼すること。そうすれば、依頼者に寄り添いながら「快適な住まいづくり」を手厚くサポートしてくれるでしょう。
スケルトンリフォームと建て替えの判断基準は……
一般的には、スケルトンリフォームのほうが建て替えよりも費用は安く抑えられます。ただし、場合によってはスケルトンリフォームのほうが高額になることもあり、一概に「安い」「高い」という判断は難しいでしょう。
現状と将来の生活設計を長期的な視点で比較し、「どちらがお得なのか?」を考えることは、判断する材料のひとつになります。
スケルトンリフォームがおすすめの場合
・一生涯、今の住居に住むという確証がない
・耐震補強については心配がない ・シロアリの被害がない
・防音対策や断熱対策がしっかりしている
・予算を重視して、できるだけ安く抑えたい
・二世帯住宅や三世帯住宅にしたいという思いがある
建て替えがおすすめの場合
・子供や孫が今の家を継いでくれる
・最新の耐震補強を施したい
・防音対策や断熱対策を施したい
・シロアリ被害の対策をしたい
・スケルトンリフォームと比較したとき、予算に大差がない
・間取りをすべて見直したい
・予算はいくらかかっても大丈夫
こういった判断基準を持って、スケルトンリフォームか建て替えかを判断すると、費用対効果を最大化できる可能性が高まります。いくら安くても、長期間にわたって住む自宅が納得できないつくりだとストレスを感じてしまうでしょう。そうなると、何のために高いお金をかけて工事をしたのかよくわかりません。
現在の住居の構造や状態、将来的なライフスタイル、理想的な間取り、そして予算などを総合的に判断し、ベストな選択をすることが大切です。
スケルトンリフォームの施工ステップを解説
木造住宅を例に、スケルトンリフォーム(内部+外部のリフォーム)の施工ステップを完成まで解説します。施工業者を決めてから、事前のプランニング、見積もりを経て工事に入り、完成に至るまでには3~6ヶ月ほどかかるのが一般的です。
STEP1:解体
スケルトンリフォームの場合、骨組みを残して解体するため重機は使えません。よって、解体は手作業となります。内部からはじまり、天井・床・壁をすべて撤去。間取り変更にともない、柱なども抜いていきます。解体時に補強を入れながら工事を行うので、経験と実績が豊富な職人の施工が欠かせません。内部解体が終わり次第、外壁も解体していきます。
STEP2:軸組み構造補強
構造計算を行い、完成時の間取りに対して必要な補強を施していきます。間取り変更にともなって取り除いた柱部分の補強、筋交いの補強、耐震補強のための制震ダンパー設置などを行います。
※こちらは木造の場合の例で、マンションなどの場合はまた工法が異なります
STEP3:基礎補強
築30年以上の建物では布基礎のケースも多く、「旧耐震基準」の建物の場合は無筋基礎であることも多いため、さまざまな補強方法からその建物に適合する補強を施します。
STEP4:外壁補強
外壁の改修も行うスケルトンリフォームでは、既存の外壁に壁倍率の高い建材を張っていくことで壁倍率を高める(耐力壁の強度を上げる)ことができます。また、建設大臣認定の補強金物工法を使用し、最高基準の耐震等級を目指すことも可能です。
STEP5:断熱工事
建物の内側・外側の両面から断熱工事を行えるのもスケルトンリフォームの強みです。予算や求める性能に合わせて、断熱素材を選ぶことが可能です。
STEP6:屋根・外壁工事
今後の作業をしやすくするために屋根部分の工事を最初に行います。屋根に使用する素材は、瓦以外の選択肢も豊富。外壁はサッシを入れ、建材を張っていきますが、外断熱を施すなど仕上げ方も好みの方法で行えます。
STEP7:内装工事
床や天井、壁など、視覚的・デザイン的にも重要な工事へ移っていきます。内装の仕上げは個人の意向次第で、こだわろうと思えばきりがありません。機能性の高い建材や有名デザイナーが手がけたクロスなどもあるので、予算に応じて選びましょう。
STEP8:完成
解体から各種補強工事、断熱工事、内外装工事を経て“新築のような住居”が完成します。瑕疵などがないか確認し、問題なければ引き渡しとなります。
スケルトンリフォームのお役立ちQ&A
以下では、ファミリー工房によく寄せられる、スケルトンリフォームに関するご質問にお答えします。以下のポイントを考慮し、施工業者を選ぶ際の参考にしてみてください。
Q1:スケルトンリフォームの費用を抑えるコツは?
解体の範囲を決めることで、費用は抑えられる可能性があります。解体する範囲が広いほど費用は高くなるのが一般的です。プランニング時に、解体する部分と残す部分を分けることで費用は抑えられます。プランナーにかけられる予算の上限を伝えれば、その範囲内でできることやアイデアなどを提案してくれるでしょう。
Q2:スケルトンリフォームに向かない住宅は?
ツーバイフォー(2×4)やプレハブ構造の建物は、柱や梁ではなく「壁の面」で家を支えています。スケルトンリフォーム自体は可能ですが、その後の間取りの変更はできなくなるので注意が必要です。また、マンションの場合は外観の変更ができず、管理規約によってリフォームの内容に制限がかかるケースもあります。事前に確認しておきましょう。
Q3:スケルトンリフォームにローンは使える?
リフォーム専用の「リフォームローン」が使える場合があります。多くは無担保ローンのため金利は高くなる傾向がありますが、支払い計画をしっかり立てられれば、ローンを組むこと自体は問題ないでしょう。ただし、審査が緩いためローンを組みやすい反面、借入金額の上限が500~1,000万円程度になることから、すべてのリフォーム費用をローンで賄えない場合がある点には注意が必要です。
一定の条件を満たせば、減税や補助金(最大300万円)の優遇措置を受けることも可能です。そのための要件や詳しい内容については、お問い合わせいただけますと幸いです。
Q4:施工業者はどうやって選べばよい?
施工業者選びは、リフォームの内容以上に重要と言えるかもしれません。業者選びを失敗すると、費用が相場よりも割高になるおそれや工期が伸びるおそれがあります。以下の5つのポイントをクリアしている施工業者なら、より安心と言えるでしょう。
・自分が行いたいリフォームと類似した施工実績があること
・創業から10年以上営業していること
・要望以上に理想的なプランを提案してくれること
・完成後のアフターサポートや保証が充実していること
・あまりにも安すぎる見積もりを出さないこと
あわせて読みたいまとめ
今回はスケルトンリフォームと建て替えのメリット・デメリットについて比較しました。「どちらがお得か?」は、個人のライフスタイルや描かれている将来のライフプランによって異なります。建て替えを考えていた方が、「スケルトンリフォームのほうが得だ」と感じる場合もあれば、スケルトンリフォームを考えていた方が建て替えによってコストパフォーマンスに満足されるケースもあります。スケルトンリフォームがお得か、建て替えがお得か。一人で判断することは非常に難しいので、検討している方は施工のプロに相談してみましょう。
ファミリー工房は、10,000件以上の施工実績を積み重ね、お客様にとっての「ベストな住まい」を実現してきました。その経験から「理想を超える住環境」をご提案し、ご満足いただけるようなリフォーム・リノベーションを目指しています。お見積もり、ご契約から着工、工事、完成後のアフターサポートまでワンストップで行えるからこそ、ご提供できるサービスがあります。ぜひお気軽にお問い合わせください。
- 監修者
- 吉澤 理都
Chief
【保有資格】
・一級建築士
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・既存住宅状況調査技術者
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