屋根工事の費用相場と種類を解説。業者を選ぶ際のポイントも紹介!
住宅における屋根は、もっとも重要な部分であるにも関わらず、そのメンテナンス方法については、あまり知られていません。今回は、屋根工事の種類と費用相場、工事を依頼するべき業者について解説します。
目次
屋根工事の種類と費用の相場は?
ひとことで屋根工事といっても、屋根の状態や素材によって、必要な工事の種類や費用も異なってきます。ここでは、屋根工事の種類と費用の相場について、詳しく解説していきます。屋根工事を検討する際の、参考としてください。
主な屋根工事の種類とその費用相場
葺き替え | 90~150万円 |
カバー工法 | 60~100万円 |
屋根塗装 | 20~50万円 |
部分補修 | 2,000~1万円 |
葺き替え
葺き替え(ふきかえ)工事は、既存の屋根材を撤去することからはじまります。撤去作業が完了したら、野地板や防水紙、下葺き材などの下地部分の状態を確認します。劣化の状況次第では、下地部分の張り替えも行います。下地に問題がなければ、新しい屋根材に張り替えて、工事完了となります。
葺き替えのメリットは、下地のメンテナンスができること、屋根材を新たに選べるという点にあります。デメリットとしては、処分費や購入費が含まれる分、高額になることと、工期が長いといった点があげられます。
費用相場は、90~150万円ほどで、工期は10~18日ほどかかります。屋根材を撤去するため、雨の多い季節にはお勧めできない工事です。
カバー工法
既存の屋根材の上に、新しい屋根材を張りつける工事方法で、重ね葺き(かさねぶき)と呼ばれることもあります。
カバー工法のメリットは、費用と工期を抑えられることと、2重屋根になるため、断熱性と防水性が高められること、既存の屋根材にアスベストが含まれていても飛散の心配がないことなどがあげられます。
デメリットとして、以下の点があげられます。
- 屋根の重量増による耐震性能の低下
- メンテナンス費用が別途必要
- 下地の状態が確認困難
- 以降の下地補修が難しく、結果的に工事費用が高くなる
費用相場は、60~100万円ほどで、工期は8~14日ほどかかります。
屋根塗装
屋根材に付着した汚れやサビを落とした後、塗料を塗りなおす工事です。洗浄に高圧洗浄機を使うため、屋根材や下地に劣化や破損がない場合にのみ行うことができます。よって、塗装工事を希望したとしても、屋根材の状態次第で別の工事方法を選択しなければならないことがあります。
屋根塗装は、葺き替えやカバー工法と比べると、はるかに工期が短く、費用も安価な工事です。費用相場は、20~50万円ほどで、工期は8~16日ほどかかります。
デメリットとしては、塗装に使用する塗料の種類によっては、次の塗装までの間隔が短くなる点があげられます。
部分補修
瓦の部分補修や漆喰の補修、雨どいや板金工事などが該当します。
瓦の部分補修とは、強風や異物の飛来による衝突などで、一部の瓦だけが破損したり落下したりした場合に行われる工事です。瓦を固定しているのが漆喰となるため、漆喰の補修工事も同時に行われるものとしてよいでしょう。
雨どいに用いられている金属パーツや、雨どい本体も経年劣化します。雨どいとしての機能が低下すると、雨漏りの原因になります。
板金工事とは、屋根の頂点や縁を覆う金属カバー(板金板)を交換する工事です。
部分工事の最大のメリットは、工期が短いこです。また、部分補修箇所に長期保証をつけることがないため、その分費用が安くなります。一方で、補修した箇所以外の部分に影響が出てしまったり、長期的に部分補修を繰り返してしまったりするデメリットがあります。費用相場は、2,000~1万円ほどで、工期は1日から数日程度です。
屋根の素材別の費用相場や工事の特徴
屋根材には、瓦、スレート、金属の3タイプがあり、それぞれにまた異なる素材が用いられています。ここでは、もっともよく用いられている屋根材の素材別ごとに、費用の相場とそれぞれの工事の特徴について解説します。
屋根瓦について
日本家屋といえば屋根瓦といわれるくらい、なじみのある屋根材です。重厚感のある屋根瓦は、耐久性に優れていて、他の屋根材には必要な塗装の塗りなおしが不要です。
瓦屋根は重量があるため、耐震性や屋根の強度を考慮しながら工事を行う必要があります。そのため、重量がさらにかさむカバー工法はできません。
瓦の種類と価格表
瓦の種類 | 価格 |
陶器(粘土) | 8,000~12,000円/㎡ |
セメント | 6,000~8,000円/㎡ |
工事・処分・瓦の合計費用
工事の種類 | 費用 |
瓦から瓦への葺き替え | 100~150万円 |
瓦からスレートへの葺き替え | 70~130万円 |
瓦から金属への葺き替え | 80~140万円 |
破損個所のみの交換(1枚あたり) | 3,000~4,000円 |
スレート屋根について
スレート屋根材とは、セメントに補強繊維を混ぜ、板状に成型したものを指します。スレートの特徴は、価格が安いこと、軽量であるため地震がきても落下しづらいことです。一方で、耐久性が低いため、メンテナンスの周期が早いというデメリットがあります。
なお、20年以上前にスレート屋根に葺き替えたという方は、アスベスト入りのスレートが使われている可能性がありますので、専門業者に確認を依頼しましょう。
スレート材の平米価格は、4,500~8,000円です。
工事・処分・スレートの合計費用
工事の種類 | 価格 |
スレートからスレートへの葺き替え | 70~150万円 |
スレートから金属への葺き替え | 90~150万円 |
カバー工法 | 60~100万円 |
塗装工事 | 20~50万円 |
金属屋根について
金属屋根材には、ガルバリウム鋼板とトタンの2種類があります。三角の赤い屋根といえば、赤いトタンが使われているといってもよいくらい目にすることの多い屋根材です。
金属系の屋根は耐久年数が長いのが特徴で、トタンは10~20年。ガルバリウム鋼板は、15~30年とされています。また、雨漏りに強い素材として知られていますが、サビや破損に弱いため、下地への影響の確認は必須です。
金属屋根材の種類と価格表
金属屋根材の種類 | 価格 |
トタン | 4,500~7,000円 |
ガルバリウム鋼板 | 5,000~7,500円 |
工事・処分・金属の合計費用
工事の種類 | 価格 |
葺き替え | 100~150万円 |
カバー工法 | 60~100万円 |
塗装工事 | 30~50万円 |
屋根工事の具体的な流れ
見積もりの依頼から工事完了までの流れについて、詳しく解説します。
屋根工事完了までのフローチャート
工程 | ポイント |
1.工事依頼者から、屋根工事業者に対して連絡を取ります。 | 複数の会社から、見積もりを取りましょう。 |
2.連絡を取った工事業者に、現地調査を依頼します。 | 無料で行ってくれる現地調査があれば、どんどん依頼しましょう。 |
3.工事業者より、調査報告書の説明を受けます。 | 調査報告書について、詳しい説明を聞きましょう。曖昧な表現や表記については、この時確認しましょう。 |
4.工事の契約を結びます。 | 調査報告書と契約書の内容に、食い違いがないかを確認しましょう。契約内容に納得できたら、契約しましょう。 |
5.ご近所へあいさつにうかがいます。 | ご近所トラブルを避けるために、工事を行うことを伝えておきましょう。 |
6.工事に着工します。 | 時々現場を見に行き、毎日の工事報告を受けることを欠かさないでください。 |
7.工事業者より工事終了の報告を受けます。 | 工事完了の検査に、立ち会いましょう。その際に保証書も受け取ります。内容を確認した後、保管しておきましょう。 |
8.アフターメンテナンス期間 | 保証期間の有無にかかわらず、工事後に発生した問題があれば、事業者に連絡しましょう。 |
簡単チェックで屋根工事のタイミングを知ろう!
業者に依頼する前に、ご自身で屋根の状態をチェックしてみましょう。なお、チェックを行うにあたって、屋根にのぼる必要はありません。
定期的に住まいの点検を行うことで、工事費用が節約できると同時に、住宅の耐用年数も延ばすことができます。
屋根の状態・セルフチェックシート(屋外) | ||
チェック項目 | 重症度 | 写真 |
今まで、点検や補修をしたことがない | 中 | |
雨どいにゆがみや変形している箇所がある | 中 | |
屋根材に色あせや変色がある | 低 | |
屋根材に苔が発生している | 中 | |
屋根材にひび割れがある | 高 | |
屋根材にサビが発生している | 中 |
屋根の状態・セルフチェックシート(屋内) | ||
チェック項目 | 重症度 | 写真 |
雨漏りしている | 高 | |
天井や壁に、雨染みがある | 高 |
もし、重症度中や高にチェックが入ったら、専門業者に屋根の点検をお願いしましょう。今すぐの工事を決めるのは気おくれするという方もいらっしゃるでしょうが、目に見えて問題が発生している場合は、早めに対処されることをお勧めします。
こんな業者には注意!
国民生活センターの生活相談概要を見ると、2021年度において「屋根工事」に関する相談は7,230件寄せられました。2020年と比較すると1.09%増えていて、家庭訪問が9.8%、点検商法が31.7%を占めていたとされています。
被害にあったのは、70歳以上の高齢者に多く、正しい情報が伝わりにくい世代が狙われているようです。
【事例】(参照元:国民生活センター/保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!)
インターネット広告で見つけた事業者に勧誘を受けた
「火災保険を使って屋根や外壁の工事の見積もりをする」というインターネット広告を見つけて、事業者に連絡を取りました。訪問した事業者から「修理代を上回る保険金が受け取れる。」といわれました。(中略)その後解約を申し出ましたが、解約できないと言われてしまいました。
台風や地震などの災害直後に増える「保険金が使える」という言葉には、注意が必要です。
屋根工事の業者を選ぶ際のポイント3選
屋根工事を手掛ける業者には、大手ハウスメーカーや工務店、地元の専門業者などがあります。あるいは、家を建ててくれた建設会社に相談するという方法もあるでしょう。ここでは、工事を依頼する業者を選ぶポイントを3つご紹介します。
ポイント1:徹底的に現地調査を行ってくれる会社である
見積もりの段階では、複数の会社に一括依頼が出せるポータルサイトを利用するとよいでしょう。実際の見積もりは、現地調査が必要です。当日は、担当者と積極的にコミュニケーションをとりましょう。調査報告書の提示の段階で、詳細な図面や写真による問題箇所の提示、赤外線カメラによる雨漏りの確認、質問への応答の態度など、徹底的な調査を行ってくれたか、真摯な態度であったかどうかも判断基準となります。
ポイント2:施工事例やお客様の声などの実績が見える会社である
自社のホームページだけでなく、口コミサイトへの書き込みなども含めて、会社の評価を見てみましょう。口コミが書かれた日時が古い、似たようなコメントが何件も登録されている会社は、信用できないと判断してもらってよいでしょう。
お客様の声を積極的に集めている会社は、信用第一をモットーに、誠実な工事をしてくれます。
同時に、施工事例の写真の掲載も確認しましょう。プライバシーに配慮しつつ、施工箇所がわかる写真があれば、なおよいでしょう。
ポイント3:リフォーム瑕疵保険(かしほけん)の登録事業者である
屋根工事は規模も大きく、費用も高額な工事です。小さい家電製品であっても保証書がつく時代ですから、施工後のフォローがなにもないというのはまずあり得ません。
工事を行う会社側はもちろん、依頼主側への保険も整っている状態が望ましいです。
リフォーム瑕疵保険は、工事の完了時に、国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人より派遣された建築士によって、工事に問題がないかどうかの検査がされ、工事の品質確認が行われるものです。
まとめ
住宅に関する工事は、安いものではありません。そのため、工事の流れや相場費用を踏まえて、信頼のできる業者を選ぶことは、トラブル解決のカギであるといえます。
屋根の葺き替え工事等は高額な工事であるため、申請を行えば、国や自治体から助成金や補助金が支給されます。また、近年多発している自然災害による被災には、火災保険が適応される場合もあります。こうした制度も利用して、賢く住まいのトラブルを解決していきましょう。
- 監修者
- 近岡 正平
Manager
【保有資格】
一級建築士
二級建築士
福祉用具専門相談員
監理技術者
既存住宅状況調査技術者
建築物石綿含有建材調査者
〒120-0001 東京都足立区大谷田 4-1-20 1F
JR線・東京メトロ千代田線「北綾瀬駅」下車 徒歩7分
営業時間
10:00~18:00 / 定休:毎週日・月
※夏期休暇、年末年始休暇、ゴールデンウィークを除く
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