ZEHとは?
ZEHについて理解するためには、まずは定義や条件を確認しておくことが大切です。あわせてエネルギー問題改善に向けて、国はどんな目標を掲げてZEHを推進しているのかについても、チェックしておきましょう。
目次
ZEHとは?
「ZEH(ゼッチ)」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅で使う一次エネルギーの年間消費量が、おおむねゼロの住宅のことです。
実際には一次エネルギーをまったく消費していないわけではありませんが、住宅の断熱性能や省エネ性能アップによってエネルギー消費量を減らし、かつ、再生可能エネルギーによる創エネを取り入れることで、エネルギー消費量を実質ゼロになるように工夫している住宅を指します。
省エネルギー性が高いことから光熱費を大幅に削減することができ、1年中快適な住環境を維持することができる住宅として、アメリカでは2008年頃から「新しい省エネの形」としてZEHが注目されています。
省エネ住宅との違いは?
ZEHのほかに、従来から「省エネ住宅」という言葉もよく耳にされている方も多いでしょう。
省エネ住宅においても光熱費を抑えることができますが、基準の厳しさに違いがあります。
それぞれの基準の違いに注目してみましょう。
断熱性能 | 一次エネルギー消費量 | |
省エネ適合住宅 | 等級4以上 | 等級4以上 |
ZEH水準省エネ住宅 | 等級5以上 | 等級6以上 |
ZEHも省エネ住宅の一種の仲間ですが、光熱費が抑えられるだけではなく「エネルギー消費量が実質ゼロ以下」となるための基準が設けられており、創エネの要件を満たす必要があるなど、ZEHの認定には高い基準が求められています。
ZEHの定義
ZEHの定性的な定義について確認しておきましょう。
<ZEHの定義(戸建て)>
外皮の『断熱性能』等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な『省エネルギー』を実現した上で、『再生可能エネルギー』等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅 |
参考)経済産業省 資源エネルギー庁より
つまり、ZEH住宅では『断熱性能』『省エネ性能』および再生可能エネルギーによる『創エネ』の3つの基準を満たす必要があります。
具体的には、次のようなものになります。
断熱性能 | 外壁、窓、屋根の素材に断熱性の高いものを採用した住宅 |
省エネ性能 | 冷暖房、換気設備、照明、給湯設備の設備において省エネ効果の高いものを導入することで、室内環境の高さと省エネを実現させた住宅 |
創エネ | 太陽光発電などの創エネシステムを導入し、年間のエネルギーの実質消費量がゼロとなる住宅 |
ZEHの基準
ZEHの条件は、『断熱性能』『省エネ性能』『創エネ』の3つの要素それぞれに、クリアすべき基準が設けられています。
●断熱性能
住宅の断熱性能を高めて室内外に熱を伝わりにくくします。それによって、外気の夏の熱さや冬の寒さによる室温の変動を軽減し、また同時に冷暖房で快適にした室内の温度を外に逃がしにくくするため、快適性を保ちながら冷暖房費を削減することが可能となります。
断熱性能は、UA値(外皮平均熱貫流率)という「室内から壁・窓・屋根を伝わって逃げる熱量」であらわし、数値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。
ZEH住宅のUA値の基準は、0.6~0.4以下(地域によって異なる)と低く定められています。
●省エネ性能
冷暖房、換気設備、照明、給湯設備といったエネルギー消費の大きい住宅設備において、省エネ効果の高いものを導入することが求められています。
一次エネルギーの消費量が、従来と比較して20%以上削減することが基準となっています。
●創エネ
太陽光発電の設置による創エネを中心に、家庭用燃料電池や蓄電池などを組み合わせて導入します。
発電によって生み出したエネルギーを貯めて、使いたい時に消費することで、実質ゼロエネルギー消費につなげます。
日本におけるZEHの実現目標
ZEHは環境に優しいだけでなく国内のエネルギー問題の改善に繋がるため、現在国をあげて取り組んでいる政策の一つとなっています。
経済産業省 資源エネルギー庁ホームページでは、以下のように記されています。
2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、●2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す●2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指すの2点が政府の実現目標とされ、その達成に向けてZEHの普及に向けた取り組みを行っていきます。 |
2018年7月の「第5次エネルギー基本計画」においては、「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建住宅の50%以上で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す。」 と閣議決定されており、その結果2020年の時点では、ハウスメーカー等が新築した注文戸建住宅のうち約56%において、ZEHを実現しています。
国の方針として、2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを宣言していることもあり、今後もZEH基準の住宅は促進されていくでしょう。
ZEHの種類
ZEHには、エネルギー消費量の削減割合などに応じて戸建て住宅だけでも複数の種類が存在しています。ここでは、戸建て住宅のZEHの種類についてご紹介いたします。
ZEHの種類
ZEHには、ZEHの基準よりもさらに厳しい基準を設けた「ZEH+(ゼッチ・プラス)」のほか、ZEHに近いものの基準に満たない「Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)」とその上位の「Nearly ZEH+(ニアリーゼッチプラス)」、創エネ設備を要しない「ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)」があります。
ZEH +(ゼッチプラス)
「ZEH +(ゼッチプラス)」は、「ZEH」の最上位モデルです。
ZEHが、断熱 + 省エネにおいて20%以上の一次エネルギー消費量の削減、かつ、太陽光発電などの創エネ設備導入による100%以上の一次エネルギー消費量削減が基準であるのに対し、「ZEH +」では、断熱 + 省エネでによる一次エネルギー消費の削減は25%以上と、より基準が厳しくなり、かつ、以下の項目のうち、2項目以上をクリアすることが求められています。
● 外皮性能のさらなる強化(外皮平均熱貫流率0.3~0.5[W/m2K])
● 住宅エネルギーマネジメントシステム(HEM)で住宅内の冷暖房、給湯システムを制御する
● 電気自動車への充電設備を設置し、電気自動車でさらなる省エネを行う
Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)
「Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)」は、ZEHの基準に近いもののZEH基準には満たない住宅です。
寒冷地や日照率低い地域、降雪量が多い地域などで、太陽光発電などによる創エネが十分にできない地域が対象となっています。
ZEHとは、年間のエネルギー消費収支の基準が異なり、ZEHでは省エネ率100%以上となっていますが、Nearly ZEHでは省エネ率75%以上となっています。
ZEHを見据えた先進住宅として、高断熱化や効率敵な省エネルギー設備を備え、太陽光発電などの創エネ設備の導入によって年間の一次エネルギー消費量を75%以上100未満を実現する住宅です。
Nearly ZEH +(ニアリー・ゼッチプラス)
「Nearly ZEH +(ニアリー・ゼッチプラス)」は、「Nearly ZEH」と同じく、太陽光発電などによる創エネが十分にできない地域を対象としたもので、「Nearly ZEH(ニアリー・ゼッチ)」より基準が厳しくなったものです。
「Nearly ZEH +」では、断熱 + 省エネによる一次エネルギー消費量をで25%以上削減したうえで、太陽光発電などによる創エネ設備を導入にて75%以上100%未満の一次エネルギー消費量の削減、そして以下の項目のうち、2項目以上のクリアが求められます。
● 外皮性能のさらなる強化(外皮平均熱貫流率0.3~0.5[W/m2K])
● 住宅エネルギーマネジメントシステム(HEMS)で住宅内の冷暖房、給湯システムを制御する
● 電気自動車への充電設備を設置し、電気自動車でさらなる省エネを行う
ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)
「ZEH Oriented(ゼッチ・オリエンテッド)」は、都市部の狭小地などZEHに向いていない地域においても、「ZEH」を目指して作られた住宅が対象となり、ゼロ・エネルギー・ハウス指向型住宅とも呼ばれています。
都市部の狭小地では、日照時間の確保が難しかったり屋根の面積が限られていたりと、太陽光発電などの再生可能エネルギー設備の導入するのが難しい環境が多いため、ZEH Orientedでは、創エネ設備の導入は求められておらず、省エネ率20%以上のみが求められます。
ZEHのメリット&デメリット
ZEH住宅のメリットは、国のエネルギー問題への改善が前面に押し出されていますが、住む人にとってもさまざまなメリットがあります。
ZEHのメリットについて具体的にどのようなものがあるか見ていきましょう。あわせてデメリットについても、しっかりチェックしておきましょう。
ZEHによって得られるメリット
●快適性の向上
ZEH基準の断熱性能によって室温を一定に保ちやすくなるため、住居の快適性が大きく向上します。
一般的な住宅に比べて、室温の変化の差は半分程度に抑えられ、また冷暖房の効きも良くなります。
就寝時も冷暖房を過剰に使う必要なく、睡眠の質も向上することが期待できます。
●ヒートショックを防ぐ
断熱性能の向上により居室間の温度差が小さくなるため、冬季のヒートショックによるリスクの低減につながります。居室間の移動時に起こりやすい血圧変動も少なくなるため、体調改善にもつながります。
●光熱費の削減
冷暖房の使用をはじめとするエネルギー使用量を最小限に抑えることができるため、光熱費の大幅な削減が見込めます。
●災害時でも安心して生活できる
太陽光発電と蓄電池の組み合わせによって、エネルギーの蓄えが可能となるため、災害時の停電にも慌てることがありません。創エネ設備によって停電の際でも電気のある安心な生活を送ることができます。
●住宅の価値が上がる
ZEH住宅は資産価値も高く、BELSの評価も星4〜5つと高い評価を得ることができます。そのため、金融機関からも高評価を得ることができ、住宅を売却する際にも一般的な住宅に比べて高値がつく傾向があります。
ZEHのデメリット
●初期費用が高くなる
ZEH基準を満たすための省エネ・創エネ設備を導入するための費用がかかります。
断熱性効果の高い素材の使用や太陽光発電の設置などで、従来よりも200〜300万円程度は高くなると言われています。
ただ、国によるZEH普及の推進もあり、太陽光発電のシステム料金については年々低下傾向にあるため、今後さらに導入コストは低くなることも予想されています。
●間取りやデザインに制限がある
ZEH基準を満たすために、間取りや屋根形状などのデザインが希望通りにならないこともあります。
エネルギー消費量に影響を与えやすい吹き抜けの空間などにも制限がかかるかもしれません。
●施工業者が限られる
ZEH住宅の建築には、認証を受けた施工会社に依頼する必要があります。地域によっては、ZEHに対応できる施工会社が限られているケースもあるため、事前に確認するようにしましょう。
あわせて読みたいまとめ
ZEHについて、定義や種類、メリット・デメリットなどをご紹介いたしました。
ZEH住宅として認められるためには厳しい基準がありますが、基準をクリアすることで住居の快適性や健康面での安全性、省エネや災害時の安心にも繋がります。
また、地球の未来のためのエネルギー問題へも貢献する価値のある住宅として、評価も高くなるでしょう。
ファミリーグループでは、すべてのZEHに対応可能となっています。
ZEHにご興味を持たれた方は、お気軽にご相談ください。
- 監修者
- 近岡 正平
Manager
【保有資格】
一級建築士
二級建築士
福祉用具専門相談員
監理技術者
既存住宅状況調査技術者
建築物石綿含有建材調査者
〒120-0001 東京都足立区大谷田 4-1-20 1F
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